アルツハイマーの母と心でつながる

6年程前、母は、アルツハイマーと診断された。 少しずつ進行し、病は母の記憶から私の名前を奪った。 1年前、私は実家へ戻り、家族と一緒に暮らし始めた。 私はずっと母の姿をした別人と向き合えないでいた。 入浴中の母の体を洗っていてふっと思った。 「母にフットセラピーをしてみよう」 入浴後、母をイスに座らせ、足をゆっくり揉み始めた。 むくんで固くなった母の足。 初めは不安がって何度も立ち上がろうした。     でもなだめながら揉んでいくうちに母の顔から不安が消え、 うっとり穏やかな表情が生まれた。 私が昔から知っている朗らかで優しい母の顔だった。 深いところで母の心とつながった気がして、 とても温かい気持ちに包まれた。 フットセラピーは、人の心と心をも繋ぐことのできる、 魔法のような術だと思った。 Y.Sさん